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マンションの修繕積立金はなぜ上がる?国交省の目安と自分の額の確かめ方

更新日:2026-09-24

マンションを買ったあと、修繕積立金が数年おきに上がっていく——という話を聞いたことがあるかもしれません。これは偶発的なことではなく、多くのマンションが採用している積立方法の、設計どおりの動きです。

この記事では、国土交通省のガイドラインと5年に一度の全国調査の数字をもとに、上がる仕組み、㎡あたりの目安の額、そして自分のマンションの額が目安と比べてどうなのかを計画書から確かめる手順を整理します。住宅ローンの返済額と違い、修繕積立金は借入時に固定されない支出なので、購入前後どちらでも見ておく価値があります。

まず全国の実態を数字で見る

国土交通省は5年に一度「マンション総合調査」を行っています。最新は令和5年度調査(令和6年6月21日公表、管理組合向けの有効回収1,589件)です。

項目令和5年度の結果
現在の修繕積立金の額(月/戸当たり)の平均13,054円
 うち駐車場使用料等からの充当額を含む総額の平均13,378円
積立方式:均等積立方式40.5%
積立方式:段階増額積立方式47.1%
長期修繕計画を作成している88.4%
計画期間25年以上の長期修繕計画に基づいて額を設定している59.8%
計画上の積立額に対して実際の積立額が不足している36.6%(うち20%超の不足が11.7%)
長期修繕計画を5年ごとに定期的に見直している63.2%(見直していない 3.7%)

注目したいのは、段階増額積立方式が47.1%と最も多く、完成年次が新しいマンションほどその割合が大きいという点です。調査は「平成27年以降のマンションの月/戸当たり修繕積立金の額の平均は、全体の平均を下回っている」とも報告しています。つまり、新しいマンションほど当初の額が低く、後から上げる前提で始まっている、という構図です。

上がるのは「段階増額積立方式」だから

修繕積立金の積み方には、大きく2つあります。

均等積立方式段階増額積立方式
積み方計画期間中ずっと同じ額当初を抑え、段階的に値上げ
当初の月額高め低め
将来の値上げ計画上は不要(見直しによる増額はありうる)計画に組み込まれている
値上げのたびに必要なこと区分所有者間の合意形成
手元に貯まる資金早い段階から多い当初は少ない

段階増額積立方式は、購入時の月々の負担を抑えられる一方で、値上げのたびに合意形成が必要になります。ガイドラインは、将来の負担増を前提とする方式について「増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と指摘し、「将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます」と記述しています。

ただし、均等積立方式なら値上げが起きないわけではありません。ガイドラインは同時に、「均等積立方式を採用した場合であっても、その後、修繕積立金の額の見直しが必要なくなる訳ではな」く、劣化の状況・技術開発・工事費の高騰によって、どの方式でも5年程度ごとの見直しと設定し直しが必要だとしています。

2024年6月の改定で入った「引上げの考え方」

ガイドラインは平成23年4月に策定され、令和6年(2024年)6月に改定されました。この改定で、段階増額積立方式の引上げ方について具体的な目安が示されています。

段階増額積立方式における適切な引上げの考え方

月あたりの徴収金額は、均等積立方式とした場合の月あたりの金額を基準額とし、計画の初期額は基準額の0.6倍以上、計画の最終額は基準額の1.1倍以内とする。

0.6 × D ≦ E かつ 1.1 × D ≧ F

  • D:計画期間全体における月あたりの修繕積立金の平均額(=A÷B÷C)
  • E:計画期間全体における月あたりの最低額
  • F:計画期間全体における月あたりの最高額
  • A:計画期間全体で集める修繕積立金の総額/B:総専有床面積(㎡)/C:計画期間(月)

この考え方どおりに組んだ場合でも、最初と最後の差は最大で 1.1 ÷ 0.6 = 約1.8倍になります。上がること自体は織り込まれていて、示されているのは「どこまでの上げ幅なら実現性があるか」という範囲です。

この目安は値上げの上限ではありません

ガイドラインには留意事項として、この考え方は「早期に引上げを完了し、均等積立方式へ誘導することを目的とするものであり、例えば、工事費高騰等の状況を踏まえた長期修繕計画の見直しにあたって、管理適正化のために現在の修繕積立金額の額を大幅に引上げる等を制限するものではない」と明記されています。1.1倍を超える増額が起こりうることは、あらかじめ織り込んでおくことになります。

㎡あたりの目安の額

ガイドラインは、収集した長期修繕計画の事例から、専有面積1㎡あたりの月額の目安を示しています(機械式駐車場分を除く)。平均値だけでなく「事例の3分の2が包含される幅」が併記されているのは、事例のばらつきが大きく、正規分布にならないためと説明されています。

地上階数/建築延床面積事例の3分の2が包含される幅平均値
20階未満・5,000㎡未満235〜430円/㎡・月335円
20階未満・5,000㎡以上〜10,000㎡未満170〜320円/㎡・月252円
20階未満・10,000㎡以上〜20,000㎡未満200〜330円/㎡・月271円
20階未満・20,000㎡以上190〜325円/㎡・月255円
20階以上240〜410円/㎡・月338円

ここでいう建築延床面積は建物全体の規模で、自分の住戸の広さではありません。専有面積をかけると、住戸1戸あたりの月額に直せます。

平均値を専有面積にかけた場合(円/月)

区分60㎡70㎡80㎡
20階未満・5,000㎡未満20,10023,45026,800
20階未満・5,000〜10,000㎡未満15,12017,64020,160
20階未満・10,000〜20,000㎡未満16,26018,97021,680
20階未満・20,000㎡以上15,30017,85020,400
20階以上20,28023,66027,040

機械式駐車場がある場合は、次の額を加算します(駐車場使用料収入で賄う経理にしている場合は加算不要とされています)。

機械式駐車場の機種1台あたり月額の修繕工事費
2段(ピット1段)昇降式6,450円/台・月
3段(ピット2段)昇降式5,840円/台・月
3段(ピット1段)昇降横行式7,210円/台・月
4段(ピット2段)昇降横行式6,235円/台・月
エレベーター方式・垂直循環方式4,645円/台・月
その他5,235円/台・月

加算額は「1台あたり月額 × 台数 ÷ マンションの総専有床面積(㎡)」で㎡単価に直します。

調査の13,054円と目安がずれて見える理由

全国平均の13,054円と、上の表の17,000〜23,000円台を見比べると開きがあります。ただし、この2つはそもそも性質の違う数字なので、引き算して不足額とみなすことはできません。

  • 13,054円は「いま徴収している額」です。段階増額積立方式が47.1%を占める以上、現時点では計画上の低い段階にある組合が多く含まれます
  • 目安の額は「計画期間全体をならした平均額」です。将来の引上げ後の額まで含めた平均で、いまの徴収額と同じ土俵にありません
  • 調査の平均には専有面積のばらつきがそのまま入っています。戸当たりの広さが分からないため、㎡単価には直せません

比べるなら、全国平均とではなく自分のマンションの計画書から出した㎡単価と、目安の幅を突き合わせることになります。

自分のマンションの額を計画書から計算する

ガイドラインが示している算出式は次のとおりです。長期修繕計画書と総会資料があれば計算できます。

計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)

(A + B + C)÷ X ÷ Y

  • A:計画期間当初における修繕積立金の残高(円)
  • B:計画期間全体で集める修繕積立金の総額(円)
  • C:計画期間全体における専用使用料等からの繰入額の総額(円)
  • X:マンションの総専有床面積(㎡)= 戸当たり専有面積 × 住戸数
  • Y:計画期間(ヶ月)= 計画年数 × 12

ガイドライン掲載のモデルケースで確かめてみます。

モデルケース:地上10階建・建築延床7,000㎡・総専有床面積4,900㎡(70㎡×70戸)・計画期間30年

A:計画期間当初の残高7,000万円
B:計画期間全体で集める総額2億6,460万円
C:専用使用料等からの繰入額9,000万円

424,600,000 ÷ 4,900 ÷ 360 ≒ 241円/㎡・月

建築延床7,000㎡・20階未満なので、目安は平均値252円/幅170〜320円。ここに機械式駐車場(3段ピット2段昇降式)30台の加算 5,840円 × 30 ÷ 4,900㎡ ≒ 36円を足すと、目安の平均値288円、幅206〜356円になります。

モデルケースの241円は206〜356円の範囲に収まっているため、目安から大きく外れてはいない、と読めます。

実際にやってみると、「目安の幅の下のほうにある」「幅から外れている」のどちらなのかがはっきりします。幅から外れていること自体が問題を意味するわけではありません。共用部分の構成や設備、過去の修繕の履歴によって必要額は変わるので、幅の外にある理由を管理組合の資料で確かめるところまでが、この計算でできることです。

中古で買うときに確かめられる書類

すでに動いているマンションを買う場合、積立の状況は契約前に書面で確認できます。仲介会社を通じて管理会社に依頼すると取得できるのが「重要事項調査報告書」(管理に係る重要事項の調査報告書)で、次のような内容が載ります。

  • 管理費・修繕積立金の現在の月額と、値上げの予定の有無
  • 修繕積立金の残高
  • その住戸の滞納の有無と金額
  • 一時金の徴収予定、借入の有無
  • 大規模修繕の実施履歴と予定

あわせて長期修繕計画書直近の総会議事録を見ると、上の計算に必要な数字と、値上げがどこまで議論されているかが分かります。

前の所有者の滞納は、買った人に請求されることがあります

管理費・修繕積立金の未払いは、建物の区分所有等に関する法律により、その住戸を引き継いだ人に対しても請求できるとされています。売主に請求できるかどうかは売買契約の定め次第なので、滞納の有無は重要事項調査報告書で確認しておく項目です。

令和5年度調査では、管理費等の滞納が発生していないマンションは62.1%で、平成30年度より減っています(=滞納のあるマンションが増えています)。完成年次が古いマンションほど滞納がある割合が高い傾向も報告されています。

戸建ての場合はどうなるか

戸建てには修繕積立金という仕組みがありません。これは「修繕費がかからない」ということではなく、「積み立てる仕組みが用意されていない」ということです。外壁・屋根・給排水設備の修繕費は、時期が来たときに自分で用意することになります。

仕組みの違いを並べると、それぞれに向き不向きがあります。

マンション戸建て
費用の出方毎月定額。一時金が加わることもある修繕時にまとまって出る
時期・内容の決定管理組合の決議による自分で決められる
実施しないという選択共用部分は個人では選べない先送りできる(劣化は進む)
資金の準備強制的に積み立てられる自分で備える必要がある
見通しの立てやすさ長期修繕計画で見える自分で計画を立てる

マンションは合意形成が要る代わりに、資金が自動的に積み上がり、計画が文書で見える。戸建ては自分の判断で決められる代わりに、備えも判断も自分に委ねられる。どちらが合うかは、費用の出方に家計が対応できるかと、決定に関わる手間をどう見るかによって変わります。

管理費・修繕積立金を含めた毎月の支出で、賃貸と購入がどこで入れ替わるかを比べられます。価格・頭金・金利のほか、維持費と資産価値の変動率も入れて試算できます。

賃貸vs購入で試算する →

よくある質問

Q. 修繕積立金が目安より安いマンションは、避けたほうがいいということですか?

そうとは限りません。目安より低い理由は、段階増額積立方式で計画の初期段階にある、共用設備が少ない、過去の修繕で必要額が見直されたなど、いくつも考えられます。目安と比べて分かるのは「いまどのあたりにいるか」までで、その理由は長期修繕計画と総会議事録で確かめることになります。

Q. 値上げに反対することはできますか?

修繕積立金の額は管理組合の決議事項なので、総会での議決によって決まります。反対票を投じることはできますが、可決されれば従うことになります。ガイドラインが「合意形成ができず修繕積立金が不足する事例も生じている」と指摘しているのは、この構造によるものです。

Q. 一時金を求められることはありますか?

あります。ガイドラインは、修繕時に一時金を徴収する方式や金融機関からの借入を前提とした積立方式が採用されている場合があると記述しています。将来の負担増を前提とする方式にあたるため、購入前に積立方式を確認しておくと、見通しが立てやすくなります。

Q. 新築で提示された額は、そのまま続くと考えていいですか?

積立方式によります。ガイドラインは、購入予定者に対して提示された額が「均等積立方式」によるものか、「段階増額積立方式」など将来の負担増を前提とするものかを確認するよう促しています。販売資料や重要事項説明書、長期修繕計画で確かめられます。

まとめ

  • 令和5年度の全国調査で、修繕積立金の月/戸当たり平均は13,054円、積立方式は段階増額が47.1%で最多
  • 計画上の積立額に対して実際の積立額が不足している組合は36.6%(20%超の不足が11.7%)
  • 上がるのは段階増額積立方式の設計どおりの動き。均等積立方式でも見直しによる増額はありうる
  • 2024年6月の改定で、段階増額の初期額は基準額の0.6倍以上、最終額は1.1倍以内という考え方が示された。ただし工事費高騰を踏まえた大幅な引上げを制限するものではない
  • 目安は㎡単価。(A+B+C)÷ 総専有床面積 ÷ 計画月数で自分のマンションの値を出し、幅と比べられる
  • 中古なら重要事項調査報告書で、現在額・残高・滞納・値上げ予定・一時金の予定を契約前に確認できる

修繕積立金は、住宅ローンの返済額と違って借入時に固定されない支出です。計画書の数字から自分のマンションの位置を一度出しておくと、値上げの議案が出たときに判断の材料が揃います。

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この記事を書いた人

都内在住。Web制作・デザインに20年以上携わり、現在はインハウスでWeb制作や改善業務に関わっています。自身でも住宅ローンを組み、返済や見直しを経験してきました。実体験と調査をもとに、住宅ローンをできるだけわかりやすく整理して発信しています。

参考・出典

※本記事の数値は上記2資料(2026年9月時点で公表されている最新版)から引用しています。専有面積をかけた月額の換算と、モデルケースの検算は当サイトによるものです。修繕積立金の額・積立方式・値上げの計画はマンションごとに異なるため、個別の判断は管理組合の長期修繕計画書と総会資料、購入前であれば重要事項調査報告書でご確認ください。