計算例

残業代の基礎になる時給の出し方:月給から1時間あたりを計算する

更新日:2026-09-15

時給制ならその金額をそのまま使えますが、月給制の場合は「1時間あたりいくらか」を自分で出す必要があります。この金額を間違えると、残業代の計算全体がずれます。

ポイントは2つ。何で割るかと、何を割るかです。

割るのは「月平均所定労働時間」

月によって日数が違うため、その月の所定労働時間で割ると、月ごとに時給が変わってしまいます。そこで、月によって所定労働時間数が異なる場合は1年間における1月平均所定労働時間数で割ることとされています。

月平均所定労働時間の計算式

(365日 − 年間所定休日日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12

年間休日121日・1日8時間の会社なら
(365 − 121)× 8 ÷ 12 = 244 × 8 ÷ 12 = 162.7時間

年間休日日数によってどう変わるかを並べると次のようになります(1日8時間の場合)。

年間休日年間所定労働日数月平均所定労働時間
105日260日173.3時間
110日255日170.0時間
120日245日163.3時間
125日240日160.0時間
130日235日156.7時間

休日が多いほど月平均所定労働時間は短くなり、同じ月給なら1時間あたりの単価は上がります。年間休日日数は就業規則やカレンダーで確認できます。

割られるのは「除外できる手当を引いた額」

月給の全額が基礎になるわけではありません。割増賃金の基礎から除外できる賃金が法令で定められています。

除外できる賃金
家族手当
通勤手当
別居手当
子女教育手当
住宅手当
臨時に支払われた賃金
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

この7種類は限定列挙とされています

行政解釈では、これらは例示ではなく限定列挙であり、当てはまらない賃金はすべて基礎に算入するとされています。
そのため役職手当・資格手当・精皆勤手当・営業手当などは除外できず、基礎に含めます。「〜手当」という名前がついていれば外せる、というものではありません。

名前ではなく実質で判断される

除外できる手当にあたるかどうかは、名称ではなく支給の実態で判断されるとされています。特に次の3つは、一律支給だと除外できないという解釈が示されています。

手当除外できる場合除外できない場合
家族手当扶養家族の人数に応じて金額が変わる扶養の有無にかかわらず一律定額
通勤手当距離や実費に応じて支給される距離にかかわらず一律定額(その部分)
住宅手当住宅費用に応じて算定される(定率を乗じる、費用の区分に応じて増える)「賃貸は一律2万円」のような定額

給与明細に「住宅手当」と書かれていても、全員一律の金額であれば基礎に含めることになります。自分の会社がどちらの方式かは、就業規則や賃金規程の支給基準で確認できます。

実際に計算してみる

月給30万円・年間休日121日・1日8時間の場合

内訳金額基礎に含めるか
基本給250,000円含める
役職手当20,000円含める
家族手当(扶養人数に応じて変動)20,000円除外できる
通勤手当(実費)10,000円除外できる
合計300,000円基礎は270,000円

270,000円 ÷ 162.7時間 = 1時間あたり約1,660円

この1,660円に割増率を掛けたものが、残業1時間あたりの単価になります。時間外なら1,660 × 1.25 = 2,075円です。割増率は区分によって変わるため、深夜手当月60時間超の50%割増もあわせて確認できます。

もし30万円の全額を基礎にすると1時間あたり1,844円となり、184円の差が出ます。月20時間の残業なら約4,600円、1年では約55,000円の違いです。
逆に言えば、除外できない手当を除外して計算されている場合も同じ幅の差が生じます。手当の内訳を見ておく意味があるのはこのためです。

固定残業代がある場合

「営業手当(固定残業代30時間分を含む)」のような形で、あらかじめ一定時間分の残業代が支払われている場合があります。この場合、固定残業代にあたる部分は基礎から除きます。

また、実際の残業が想定時間を超えた分については、別途支払われることになります。何時間分が含まれているのか、基本給とどう区分されているのかは、雇用契約書や賃金規程で確認できます。区分が明確でない場合、固定残業代として認められないことがあります。

まとめ

  • 1時間あたりの賃金=(月給 − 除外できる手当)÷ 月平均所定労働時間
  • 月平均所定労働時間=(365 − 年間休日)× 1日の所定労働時間 ÷ 12
  • 除外できるのは7種類のみ。役職手当・資格手当・精皆勤手当は基礎に含める
  • 家族手当・通勤手当・住宅手当は、一律定額だと除外できないとされている
  • 年間休日121日・1日8時間なら月平均162.7時間

時給が出れば、あとは時間を掛けるだけです。1か月分の勤務時間を集計しておくと、区分ごとの割増を反映した金額を確認できます。

算出した時給を入力すると、法定内・時間外・深夜それぞれの割増を反映した金額を計算できます。1か月分をまとめて集計することもできます。

タイムカード集計で計算する →

登録不要・完全無料/入力内容はサーバーに送信されません

この記事を書いた人

都内在住。Web制作・デザインに20年以上携わり、現在はインハウスでWeb制作や改善業務に関わっています。会社員として勤怠管理や残業の集計を自分で行ってきた経験をもとに、労働時間まわりの仕組みをできるだけわかりやすく整理して発信しています。

この記事の位置づけ

労働基準法の一般的な内容を整理したもので、個別の事案について結論を示すものではありません。就業規則や労使協定の内容によって取り扱いは変わります。実際の判断が必要な場合は、勤務先の担当部署か、所轄の労働基準監督署・総合労働相談コーナーにご相談ください。

参考・出典

※2026年9月時点の法令にもとづいています。記事内の金額はすべて当サイトの独自試算で、割増率は労働基準法が定める最低基準を用いています。就業規則でこれより高い率を定めている場合は結果が変わります。