繰り上げ返済とNISA投資はどちらが得か?金利1%台で変わる判断
更新日:2026-09-13
手元の100万円を「繰り上げ返済に回すか、NISAで投資するか」は、住宅ローンを抱える人が必ず一度は考えるテーマです。2026年に入って変動金利が1%台に乗ったことで、この判断の前提も変わりました。
この記事では、残債2,500万円・残り30年・変動1.2%のローンを例に、100万円をどちらに回した場合に何がどう変わるかを計算します。
比較の考え方:繰り上げ返済のリターンは「ローン金利」
繰り上げ返済は投資ではありませんが、「ローン金利と同じ利回りを、確実に、非課税で得る」のと同じ効果があります。金利1.2%のローンを100万円繰り上げれば、その100万円に対して年1.2%分の利息を払わずに済むからです。
つまり比較すべきは「確実な1.2%」と「不確実な投資リターン」ということになります。
100万円を繰り上げ返済した場合
残債2,500万円 / 残り30年 / 金利1.2% / 100万円を期間短縮型で繰上げ
| 効果 | 金額・期間 |
|---|---|
| 削減できる利息 | 約406,362円 |
| 短縮される返済期間 | 17ヶ月 |
100万円を投じて約40.6万円の利息を削減できる計算です(金利が変わらなかった場合)。
削減額が100万円に対して約40%に見えますが、これは30年という期間をかけて得られる効果です。年あたりの利回りに直すと、およそ1.2%(ローン金利と同じ)になります。
100万円を投資に回した場合
同じ100万円をNISA口座で30年間運用したケースです。NISAは2026年時点で年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)、生涯1,800万円まで非課税で保有できます。
100万円を30年間運用(非課税・複利)
| 想定利回り | 30年後 | 増加額 |
|---|---|---|
| 年3% | 約242.7万円 | 約142.7万円 |
| 年5% | 約432.2万円 | 約332.2万円 |
利回りは一定と仮定した単純計算です。実際の運用成績は変動し、元本割れの可能性もあります。
数字だけを並べれば、年3%でも投資のほうが大きくなります。ただし、この2つは前提がまったく違います。
数字が同じでも性質が違う
| 繰り上げ返済 | 投資(NISA) | |
|---|---|---|
| リターン | ローン金利と同じ(確定) | 変動する(元本割れもある) |
| 税金 | かからない | NISA枠内なら非課税 |
| 資金の流動性 | 戻せない(再度借りるのは困難) | いつでも売却できる |
| 手数料 | 無料〜数千円 | 信託報酬などが継続的にかかる |
| 精神的な負担 | 残債が減る安心感 | 相場変動を受け止める必要がある |
とくに流動性の差は見落とされがちです。繰り上げ返済に回した100万円は、失業や病気のときに引き出せません。生活防衛資金を確保しないまま繰り上げ返済に回すと、いざというときに高い金利のローンを借りることになりかねません。
繰り上げ返済の効果は、残債・残年数・金利・実行するタイミングで変わります。自分の条件で削減額と短縮期間を計算してみてください。
繰り上げ返済シミュレーターで計算する →住宅ローン控除の期間中は判断が変わる
住宅ローン控除を受けている期間は、年末残高の0.7%が所得税・住民税から控除されます。つまり残債を減らすと、その分の控除額も減ります。
控除期間中の実質的な金利
| 項目 | 率 |
|---|---|
| ローン金利 | 1.2% |
| 住宅ローン控除 | ▲0.7% |
| 実質負担 | 0.5% |
控除期間中(新築で13年)に繰り上げ返済をすると、実質0.5%の利息を減らすために、100万円の流動性を手放すことになります。控除が終わってから実行するという考え方もあります。
ただし控除額は「年末残高の0.7%」と「その年に納めた所得税+住民税の一部」の小さいほうが上限です。納税額が少ない場合は、繰り上げ返済をしても控除額が減らないこともあります。ローン控除シミュレーターで自分の控除額を確認しておくと判断しやすくなります。
金利が上がると天秤はどう動くか
繰り上げ返済のリターンはローン金利そのものなので、金利が上がれば繰り上げ返済の効果も上がります。
| ローン金利 | 繰り上げ返済の実質リターン(控除終了後) |
|---|---|
| 0.5% | 0.5% |
| 1.2% | 1.2% |
| 2.0% | 2.0% |
| 3.0% | 3.0% |
金利が3%まで上がれば、「確実な3%」と「不確実な3〜5%」の比較になり、判断はかなり近づきます。2026年9月時点の1%台では投資に分がある計算ですが、この差は金利水準によって縮まる関係にあります。
どちらか一方に決める必要はない
実際には、次のような組み合わせを取る人が多くいます。
- 生活防衛資金を先に確保する:生活費の6ヶ月〜1年分。ここは繰り上げ返済にも投資にも回さない
- 住宅ローン控除の期間は投資を優先する:実質金利が下がっている期間を活かす
- 控除終了後、金利水準を見て配分を決める:金利が上がっていれば繰り上げ返済の比重を上げる
- 定年までに完済できるかを逆算する:退職後に残債を残さない前提で必要な繰り上げ額を決める
よくある質問
Q. 繰り上げ返済は「期間短縮型」と「返済額軽減型」のどちらが得ですか?
利息の削減額は期間短縮型のほうが大きくなります。一方、返済額軽減型は毎月の負担が下がるため、家計に余裕を作りたい場合に向きます。目的が違うので、削減額だけで優劣は決まりません。
Q. 投資の利回りは何%で考えるのが妥当ですか?
過去の実績から3〜5%で試算されることが多いものの、将来の利回りを保証するものではありません。運用期間中に元本を大きく下回る時期があることも前提に置く必要があります。
Q. 変動金利が上がったら、投資をやめて繰り上げ返済に切り替えるべきですか?
金利上昇で繰り上げ返済の効果が上がるのは事実ですが、投資は途中でやめると複利の効果も途切れます。配分を見直す程度にとどめるか、追加の資金の振り分け先を変えるという方法もあります。
まとめ
- 繰り上げ返済のリターンはローン金利と同じで確実。100万円で約40.6万円の利息削減・17ヶ月短縮(1.2%・残30年)
- 同じ100万円を年3%で30年運用すると約242.7万円。数字だけなら投資が上回る
- ただし投資は不確実で、繰り上げ返済は資金を戻せない。性質が違う
- 住宅ローン控除期間中は実質金利が1.2%→0.5%に下がる
- 金利が上がるほど繰り上げ返済の効果は上がり、判断は近づく
どちらが正しいという答えはなく、金利水準・控除の有無・手元資金の余裕によって変わります。まずは自分のローンで繰り上げ返済の効果額を出し、投資に回した場合の想定と並べてみるところからになります。
100万円を繰り上げた場合の利息削減額と期間短縮を、残債・残年数・金利を入れてその場で計算できます。期間短縮型と返済額軽減型の比較にも対応しています。
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参考・出典
※記事内の試算は元利均等返済の計算式に基づく当サイトの独自試算です(2026年9月時点)。実際の適用条件は金融機関ごとに異なります。