疑問解消

有給休暇を拒まれたら:時季変更権が使える場面と使えない場面

更新日:2026-09-17

有給休暇を申請したら「その日は困る」と言われた、という場面があります。会社にはどこまでの権限があるのかを整理します。

時季指定権と時季変更権

年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることとされています。これを時季指定権といいます。原則として、労働者が指定した日に休めます。

これに対して使用者は、請求された時季に与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に、他の時季に与えることができます。これが時季変更権です。

名前のとおり、これは「変更する」権利であって「拒否する」権利ではありません。他の時季に与えることが前提です。取得そのものをなかったことにはできません。

「事業の正常な運営を妨げる」とは

単に忙しい、人手が足りない、という程度では認められにくいと解されています。判断の要素として挙げられるのは次のようなものです。

  • その労働者の業務が、他の人では代替できない内容か
  • 同じ日に多数の労働者が重なっているか
  • 代替要員を確保する努力をしたか
  • 繁忙の程度と、その時期の予測可能性

会社には、労働者が指定した時季に休めるよう状況に応じた配慮をすることが求められると解されています。慢性的に人手が足りない状態を理由にして毎回変更する、という運用は想定されていません。

時季変更権が使えない場面

退職日が決まっている場合

時季変更権は他の時季に与えることが前提なので、振り替える先がない場合には行使できないと解されています。退職直前で、退職日までに他の日がない場合がこれに当たります。

時効で消滅する直前

繰越分が時効で消える直前の請求についても、他の時季に与える余地が乏しくなります。この点も同様に考えられます。

長期の連続取得

数週間にわたる長期の連続取得については、事前の調整が求められるという考え方があります。代替要員の配置を検討する時間が必要になるためです。

調整の過程で会社が時季変更権を行使する余地は、短期の取得より広く認められやすいとされています。長期の取得を考えている場合は、早めに相談しておくと調整しやすくなります。

理由を聞かれた場合

年次有給休暇の取得に理由は要りません。会社が理由を尋ねること自体はありますが、理由の内容によって取得を認めないという扱いは想定されていません

時季変更権の判断材料として、代替の可否を検討するために予定を聞くことはあり得ます。ただし、それは業務の調整のためであって、取得の可否を決めるためのものではありません。

取得を認めてもらえない場合

話し合いで解決しない場合は、次のような窓口があります。

  • 勤務先の人事・労務の担当部署
  • 社内に労働組合があれば組合
  • 事業場を管轄する労働基準監督署
  • 各都道府県労働局の総合労働相談コーナー

総合労働相談コーナーは、労働問題全般について無料で相談できる窓口です。労働者が監督機関に申告したことを理由として不利益な取扱いをすることは、労働基準法で禁じられています。

記録を残しておく

いつ申請していつ何と言われたか、記録が残っていると状況を説明しやすくなります。申請が書面やシステム上で行われていれば、その履歴が残ります。口頭でのやりとりが中心の場合は、日付と内容を控えておくと整理しやすくなります。

まとめ

  • 労働者が指定した時季に与えるのが原則
  • 時季変更権は「他の時季に変える」権利で、取得を拒む権利ではない
  • 単に忙しいというだけでは認められにくい
  • 退職直前など、振り替える時季がない場合は行使できないと解されている
  • 取得に理由は要らない

入社日と週の勤務日数を入れると、次の付与日と日数、繰越と時効、年5日の取得義務までを基準日ごとの一覧で確認できます。

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この記事を書いた人

都内在住。Web制作・デザインに20年以上携わり、現在はインハウスでWeb制作や改善業務に関わっています。会社員として自分の有給休暇の残日数を数え違えた経験から、労働基準法の決まりを条文にあたって整理したものを発信しています。

この記事の位置づけ

労働基準法の年次有給休暇に関するの一般的な内容を整理したもので、個別の事案について結論を示すものではありません。就業規則や労使協定、加入している健康保険の定めによって取り扱いは変わります。実際の判断が必要な場合は、勤務先の担当部署か、所轄の労働基準監督署・総合労働相談コーナーにご相談ください。

参考・出典

※2026年9月時点の法令にもとづいています。会社が法定を上回る日数や早い付与を定めている場合は結果が変わります。実際の日数は就業規則や労働契約で確認できます。