退職するときの有給休暇:残日数の消化、買い上げ、引き継ぎとの関係
更新日:2026-09-17
退職が決まると「残っている有給はどうなるのか」が気になります。結論としては在職中に取得するのが原則で、退職日を越えて取得することはできません。
退職日を越えては取得できない
年次有給休暇は労働義務がある日を休む制度です。退職後は労働義務そのものがないため、退職日の翌日以降に取得することはできません。
そのため、残日数を消化したい場合は退職日までの期間に収まるように予定を組むことになります。残日数が多いときは、最終出社日を早めに設定して、そこから退職日までを有給の期間にする形がよく使われます。
残20日を消化する場合の組み立て方
退職日 … 3月31日
最終出社日 … 3月3日
3月4日〜3月31日のうち所定労働日20日を有給にあてる
(土日祝など、もともとの休日は日数に数えません)
時季変更権は事実上使えない
使用者には、請求された時季に与えると事業の正常な運営を妨げる場合に他の時季に変更する権利(時季変更権)があります。ただしこれは他の時季に与えることが前提の権利です。
退職日が決まっていて、その後に振り替える余地がない場合、変更できる時季が存在しません。このため退職直前の請求に対しては、時季変更権を行使できないと解されています。
とはいえ、実務では引き継ぎとの調整が必要になります。制度上は取得できても、退職の申し出から退職日までの期間が短いと、日数を消化しきれないことがあります。残日数が多い場合は、退職を申し出る時期から逆算しておくと組み立てやすくなります。
買い上げは義務ではない
年次有給休暇の買い上げをあらかじめ予定して取得させないことは認められないと解されています。ただし、退職時に結果として残ってしまった分を買い上げることは、例外的に許容されると解されています。
重要なのは、会社に買い上げる義務はないという点です。買い上げの制度があるかどうか、あるとして1日あたりいくらかは会社の規定によります。就業規則で確認できます。
退職日に基準日が来る場合
退職日までの間に基準日が来れば、その日に新しい日数が付与されます。付与の要件(継続勤務と出勤率8割)を満たしていれば、退職が決まっていても付与されます。
基準日が10月1日、退職日が10月31日の場合
10月1日に新しい日数が付与される
10月2日〜10月31日の所定労働日の範囲で取得できる
付与された日数を全部使えるとは限らず、残った分は消滅する
引き継ぎとの関係
有給休暇の取得は労働者の権利ですが、退職にあたって引き継ぎを行うことは労働契約上の義務の範囲と考えられています。両者が衝突しやすいのがこの場面です。
実務的には、次のように分けて考えると整理しやすくなります。
- 引き継ぎに必要な日数を見積もる
- 残日数と、退職日までの所定労働日数を数える
- 両方が収まる最終出社日を決める
- 収まらない場合、退職日を後ろにずらせるかを相談する
退職日そのものは労使の合意で決まるため、日数が足りない場合に退職日を延ばして調整することもあります。
転職先には引き継げない
年次有給休暇は勤務先ごとに発生する制度なので、転職先には持ち越せません。転職先では、その会社での雇入れの日から改めて6か月の継続勤務が必要になります。
前職での勤続年数も引き継がれないため、日数は10日からのスタートです。転職のタイミングによっては、有給が使えない期間ができることになります。
まとめ
- 退職日を越えて取得することはできない。在職中に消化するのが原則
- 振り替える時季がない場合、時季変更権は行使できないと解されている
- 買い上げは例外的に許容されるが、会社に義務はない
- 退職日までに基準日が来れば、そこで新しい日数が付与される
- 転職先には引き継げず、6か月の継続勤務からやり直しになる
この記事の位置づけ
労働基準法の年次有給休暇に関するの一般的な内容を整理したもので、個別の事案について結論を示すものではありません。就業規則や労使協定、加入している健康保険の定めによって取り扱いは変わります。実際の判断が必要な場合は、勤務先の担当部署か、所轄の労働基準監督署・総合労働相談コーナーにご相談ください。
参考・出典
※2026年9月時点の法令にもとづいています。会社が法定を上回る日数や早い付与を定めている場合は結果が変わります。実際の日数は就業規則や労働契約で確認できます。