卒婚とは?離婚との違い・費用・
合意書の作り方と卒婚後の暮らし
公開日:2026-04-10 更新日:2026-09-26
卒婚は「婚姻はそのまま、生活だけを分ける」形です。離婚と比べて手続きが少ない一方で、夫婦としての権利と義務は続きます。
この記事では、卒婚と離婚の違いを両側から並べ、卒婚を選ぶ場合に取り決めておく項目と、その後の暮らしの組み立て方までを1本にまとめています。
卒婚とは
卒婚とは、法律上の婚姻関係を続けたまま、夫婦がそれぞれ別の生活を送る選択を指す言葉です。「結婚を卒業する」という意味合いの造語で、法律上の定義はありません。2010年代以降にメディアで取り上げられるようになり、子育てが一段落した40〜60代の夫婦を中心に知られるようになりました。
形はさまざまで、別々の家に住む夫婦もいれば、同じ家の中で生活の時間やお金を分ける夫婦もいます。共通しているのは、離婚届は出さず、戸籍上は夫婦のままという点です。
卒婚と離婚の違い(法律上の関係)
いちばん大きな違いは、法律上の婚姻関係が続くかどうかです。卒婚では夫婦の権利・義務がそのまま残り、離婚ではそれらを解消したうえで、財産分与・年金分割・養育費などを取り決めます。
| 項目 | 卒婚 | 離婚 |
|---|---|---|
| 戸籍・婚姻関係 | 夫婦のまま | 解消される |
| 相続 | 配偶者として相続人になる | 相続人ではなくなる |
| 生活費の分担 | 夫婦の扶助義務が続き、別居中は生活費(婚姻費用)の分担を求められる | 夫婦としての分担は終わる(子の養育費は別) |
| 財産分与・年金分割 | 行わない(婚姻中のルールのまま) | 取り決めて確定させる |
| 配偶者控除など | 要件を満たせば引き続き使える場合がある | 対象外になる |
| 新しいパートナーとの婚姻 | できない | できる |
| 相手の負債 | 夫婦の日常の生活に関する債務などで影響を受ける可能性がある | 財産関係を清算した後は切り離される |
卒婚中に相手が亡くなった場合は、配偶者として相続が発生します。遺族年金のように婚姻を前提とする制度も、制度ごとの要件(生計維持の関係など)を満たせば対象になりえます。反対に、相手が多額の負債を抱えた場合には、婚姻関係にあることで影響が及ぶ場面もあるとされています。
費用の比較
卒婚は法的な手続きが要らないぶん、主にかかるのは住まいを分ける費用と、取り決めを書面にする費用です。
離婚は、話し合いでまとまる協議離婚でも、弁護士への相談・書類・引越しを合わせて50〜150万円程度を見込むことが多く、調停や裁判に進むと弁護士費用だけで100〜300万円を超える例もあります。費用の内訳と年代による違いは離婚の手続き・費用・時期で詳しく整理しています。
なお、卒婚から後に離婚へ進んだ場合は、その時点で離婚の手続きと費用が発生します。卒婚の費用は「離婚の費用の代わり」ではなく、「いまの段階でかかる費用」として比べると数字の意味がずれません。
卒婚と離婚、それぞれの特徴
卒婚の特徴
- 手続きと費用が少なく、始めやすい
- 配偶者としての相続や、婚姻を前提とする制度の対象から外れない
- 子どもや親族にとっての変化が、離婚に比べて小さいと受け止められやすい
- いったん距離を置き、その後の関係を改めて考える時間を取れる
- 一方で、新しいパートナーと婚姻することはできない
- 取り決めを守らせる仕組みが弱く、合意書の内容が守られない可能性がある
- 相手の負債や行動の影響を、婚姻関係にあるかぎり受ける場面がある
離婚の特徴
- 法律上の関係が解消され、財産分与や年金分割で権利関係が確定する
- 新しいパートナーとの婚姻ができる
- 相手の負債などから、財産関係の清算後は切り離される
- 一方で、手続きの時間と費用がかかり、話し合いがまとまらなければ調停・裁判へ進む
- 配偶者としての相続や、婚姻を前提とする制度の対象からは外れる
どちらが合うかを考える材料
どちらが良いかは夫婦の状況によって変わるため、ここでは「どういう条件ならどちらの特徴が効いてくるか」を並べます。
- 相手への強い対立はないが、生活のリズムや価値観が合わないという条件なら、卒婚の「距離を置きながら関係を保てる」点が効いてきます
- 相続や婚姻を前提とする制度の扱いを残したいという条件なら、卒婚では婚姻関係が続く点が判断材料になります
- 不貞行為や暴力など、関係を続けることが難しい事情があるという条件なら、離婚の「権利関係を確定させられる」点が効いてきます
- 新しいパートナーとの婚姻を考えている、相手の負債から切り離したいという条件なら、離婚でしか実現できない部分があります
どちらの場合も、いまの財産・年金・住まいの数字を先に出しておくと、話し合いの材料が増えます。
卒婚合意書に書いておく項目
卒婚は法的な手続きが不要なぶん、取り決めが口約束のまま曖昧になりやすい面があります。生活費や財産の扱いを書面にしておくと、後から「言った・言わない」になりにくくなります。
① 生活費の分担
- 家賃・光熱費・食費などを、どちらがどれだけ負担するか
- 子どもの教育費・医療費の分担
- 収入が変わったときの見直しのルール
② 財産の取り扱い
- いまある共有財産(預貯金・自宅など)の管理のしかた
- これから築く財産を共有にするか、分けて管理するか
- 入院・介護など、急な出費があったときの分担
③ 生活上のルール
- 連絡の頻度と方法、緊急時の連絡体制
- お互いの交友関係・プライバシーへの関わり方
- 新たなパートナー関係についての考え方
- 年中行事や、子ども・孫との関わり方
④ 将来の見通し
- 卒婚を続ける期間の目安と、見直す時期
- 離婚に進む場合の条件の大枠
- 一方が亡くなった場合の対応(遺言書との整合)
公正証書にする手順と費用
作った合意書は、公証役場で「公正証書」にできます。公証人が内容を確認して原本を保管するため、書面の証明力が高まります。手順は、合意書の下書きを作る → 最寄りの公証役場に連絡して下書きを送る → 内容の調整 → 夫婦で公証役場に出向いて作成、という流れが一般的です。
合意書が無い場合、生活費の分担で意見が分かれても根拠を示しにくいこと、財産が一方的に使われても対応が難しいこと、後に離婚へ進んだときに条件の話し合いが振り出しに戻ることが起きやすいとされています。
卒婚後の暮らしの組み立て方
自分の時間軸を書き出す
- 5年後・10年後・20年後にどんな生活をしていたいかを書く
- やりたいこと・行きたい場所・会いたい人を並べる
- そのために必要なお金・健康・スキルと、いまとの差を確かめる
働き方とお金
卒婚後は、収入だけでなく生きがいとのつながりで働き方を選び直す人もいます。パート・フリーランス・社会貢献活動・副業など選択肢は多い一方で、生活費を二つの世帯で持つことになるため、住居費の分だけ支出は増えます。収入と支出を世帯ごとに書き出しておくと、どこまで働くかを決める材料になります。
パートナーとの新しい距離感
卒婚は婚姻が続いているため、相手は「他人」ではありません。定期的に会う・連絡する頻度、入院や介護のときの助け合い、お互いのプライバシーの範囲を、合意書とは別に話し合っておく夫婦もいます。
つながりと自分の時間
後回しにしてきた趣味・学び・旅行に時間を使えるようになる一方で、一人の時間が増えることで孤独を感じる人もいます。新しいコミュニティに参加することは、孤独感をやわらげるだけでなく、仕事や人との出会いにつながることもあります。
卒婚でも離婚でも、手元に残るお金と必要な生活費の差がわかると、選択肢を具体的に比べられます。もしも卒婚電卓では、卒婚と離婚のどちらの場合も費用の目安を試算できます。
制度の一般的な仕組みと、判断に使える数字を整理したものです。個別の事情でどう扱われるかは、弁護士・法テラス・年金事務所・税務署・自治体の窓口などで確認できます。
費用の目安は、当サイトが一般的な料金水準から置いた独自の目安です(2026年9月時点)。公証人の手数料は目的の価額や内容によって変わります。
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