年金分割とは?合意分割・3号分割と
請求期限、熟年離婚の老後資金

公開日:2026-04-10 更新日:2026-09-26

年金分割は、婚姻期間中の厚生年金の記録を夫婦で分ける制度です。分けられるのは将来の年金額そのものではなく、年金額を計算するもとになる記録です。

婚姻期間が長いほど分割の影響は大きくなるため、50代以降の離婚では、財産分与と並んで老後の収入を左右する項目になります。

年金分割の仕組み

年金分割は2007年4月に始まった制度で、婚姻期間中に納めた厚生年金保険料の記録(標準報酬月額・標準賞与額)を、夫婦の間で分けられるようにしたものです。分割を受けた側は、分けられた記録をもとに自分の老齢厚生年金が計算されます。

ポイントは「分割されるのは記録」という点です。年金を受け取る年齢になったとき、分割後の記録にもとづいて年金事務所がそれぞれの年金額を計算します。分割の方法には「合意分割」と「3号分割」の2つがあります。

合意分割

夫婦の話し合い、または家庭裁判所の手続きで分割の割合(按分割合)を決めて行う方法です。割合の上限は2分の1です。話し合いで決まらない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。

手続きは、離婚後に年金事務所へ「標準報酬改定請求書」を出して行います。戸籍謄本などの離婚を確かめられる書類と、按分割合を定めた公正証書や調停調書・審判書などが必要になります。

3号分割

会社員や公務員の配偶者として扶養に入り、国民年金の第3号被保険者だった期間について、相手の合意なしに記録を2分の1ずつ分けられる方法です。対象は2008年4月以降の第3号被保険者の期間で、それより前の期間は合意分割で決める必要があります。

3号分割は請求するだけで2分の1に分割されるため、相手が話し合いに応じない場合でも手続きできます。ただし、対象になる期間が限られている点は確かめておく必要があります。

合意分割3号分割
対象の期間婚姻期間中の厚生年金の記録2008年4月以降の第3号被保険者期間
相手の合意必要(まとまらなければ家庭裁判所)不要
割合上限2分の1で決める2分の1

請求期限(2026年4月から5年)

年金分割の請求期限は、これまで離婚した日の翌日から2年以内でした。2025年の年金制度改正で、2026年4月1日以降に離婚した場合は5年以内に延びています。財産分与の請求期間が同じ日から5年に延びたことに合わせたものです。

期限を過ぎると請求できなくなります。離婚直後は手続きが重なるため、離婚届と同じ時期に年金事務所へ相談しておくと、期限を気にせずに済みます。

分割される額の見当の付け方

分割でどれだけ年金が変わるかは、婚姻期間の長さと相手の報酬によって大きく違います。正確な額は、年金事務所で「年金分割のための情報提供請求」をすると、分割の対象になる期間や記録の情報を受け取れます(離婚前でも請求できます)。「ねんきんネット」でも自分の記録を確かめられます。

見当を付けるだけなら、2003年4月以降の老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算式「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」を使えます。

前提婚姻期間20年(240か月)すべて3号分割の対象、相手の平均標準報酬額35万円
分割で移る記録35万円の2分の1=17.5万円 × 240か月
計算17.5万円 × 5.481/1000 × 240 ≒ 23万円
分割を受ける側の老齢厚生年金が年23万円前後増え、相手側は同じだけ減る

この計算は、賃金の再評価や生年月日による乗率の違いを入れていない概算です。老齢基礎年金(国民年金)の部分は分割の対象ではないため、この額には含まれません。

手続きの流れ

  1. 年金事務所で「年金分割のための情報提供請求」をして、対象の期間と記録を確かめる
  2. 合意分割の場合は、按分割合を話し合う。まとまった内容は公正証書などにする。まとまらなければ家庭裁判所の調停・審判
  3. 離婚が成立したら、期限内に年金事務所へ「標準報酬改定請求書」を出す
  4. 改定後の記録の通知が届く。年金を受け取る年齢になると、その記録で年金額が計算される

卒婚のように離婚をしない場合は、年金分割は行われません。婚姻が続くかぎり、それぞれが自分の記録で年金を受け取ります。

年金分割の対象にならないもの

退職金や確定拠出年金の扱いは財産分与・退職金・慰謝料・税金で説明しています。

熟年離婚と老後の収支

50代での離婚では、退職・老後という長い時間軸での資産の見通しが中心の論点になります。子育てが終わっているか、残りが短くなっている時期のため、養育費の比重は小さくなる一方で、退職金・年金分割・住まいの比重が大きくなります。

離婚後は、一人分の年金と貯蓄で老後の生活費をまかなうことになります。考えておきたいのは次の3つです。

  1. 年金の見込み額:ねんきん定期便に分割後の変化を加えて、65歳からの年額を出す
  2. 老後の生活費:いまの支出から住居費・医療費を一人分に置き換えて見積もる
  3. その差を埋める資産:財産分与で受け取る額と、退職までに積み立てられる額
65歳からの年金(分割後の見込み)月14万円
一人暮らしの生活費(見積もり)月17万円
毎月の不足3万円
3万円 × 12か月 × 25年(65〜90歳)= 900万円

数字は説明のための仮定です。年金だけでは生活費に届かない場合、このように差額に老後の年数をかけた額が、貯蓄で用意しておく目安になります。当サイトの老後資金シミュレーターで、差額と必要な積立額を試算できます。医療費や介護費は年齢とともに増えるため、その分の余裕も見込んでおくと数字がずれにくくなります。

住まいとつながり

50代以降の住まい選びでは、いまの暮らしやすさと、70代・80代になったときの暮らしやすさの両方が判断材料になります。賃貸は年齢が上がると審査が通りにくくなる傾向があるとされ、公営住宅・高齢者向けの賃貸・サービス付き高齢者向け住宅なども将来の選択肢として並べておくと比べられます。

一人暮らしになると、趣味の仲間・地域の活動・職場のつながりなど、人との接点を意識して持つことが生活の安定につながりやすいとされています。心の回復や再出発については離婚後のメンタルヘルスと再出発、50代以降の生活費は離婚後の生活費で整理しています。

この記事の位置づけ

制度の一般的な仕組みと、判断に使える数字を整理したものです。個別の事情でどう扱われるかは、弁護士・法テラス・年金事務所・税務署・自治体の窓口などで確認できます。

分割額の計算例は、公表されている報酬比例部分の計算式を使った当サイトの独自の概算です(2026年9月時点)。実際の額は年金事務所の情報提供で確認できます。

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参考・出典