住宅ローン・ペアローンが残る家の離婚
売却か住み続けるかと費用

公開日:2026-04-10 更新日:2026-09-26

住宅ローンが残っている家は、離婚の話し合いの中でも決めることが多い財産です。「家をどうするか」と「ローンをどうするか」は別の問題で、ローンの契約は夫婦の合意だけでは変えられません。

この記事では、単独のローン・ペアローン・連帯債務のそれぞれについて、売却する場合と住み続ける場合の手続きと費用を並べています。

最初に確かめる3つのこと

  1. 家の名義:登記簿(登記事項証明書)で、土地・建物の所有者と持分を確かめる
  2. ローンの契約の形:単独ローンか、ペアローンか、連帯債務か、連帯保証が付いているか
  3. 家の時価とローン残高:売ったらいくらになり、いくら残っているか

家の名義とローンの債務者が一致しているとは限りません。財産分与で家の名義を変えても、ローンの債務者は金融機関との契約で決まっているため、そのままでは変わらない点が出発点になります。

アンダーローンかオーバーローンか

時価は、不動産会社の査定のほか、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」(2024年4月に旧・土地総合情報システムから移行)で近くの取引価格を調べて見当を付けられます。不動産の価格は地域と時期で大きく動くため、1社の査定だけでなく複数の数字を見ておくと幅がつかめます。

売却して精算する場合

アンダーローンの場合、売却代金でローンを完済し、残った手取りを財産分与として分けるのが手続きとしてはいちばん単純です。

売却価格3,000万円
ローン残高2,400万円
仲介手数料(3,000万円×3%+6万円)×1.1105.6万円
抵当権抹消などの諸費用(仮定)5万円
手取り 約489万円 → 2分の1ずつなら約245万円

オーバーローンの場合は、売っても残る債務を夫婦でどう負担するかを先に決める必要があります。

売却価格2,500万円
ローン残高2,900万円
仲介手数料(2,500万円×3%+6万円)×1.189.1万円
不足 約489万円(ほかの諸費用を除く)

この不足分は、手元の預貯金で埋めるか、分担を決めて返し続けることになります。ほかに預貯金などの共有財産がある場合は、家のマイナスと合わせて財産分与の全体で調整するのか、家は切り離して考えるのかによって、それぞれの受け取る額が変わります。手元の資金で差額を埋められないときは、金融機関の同意を得て市場で売る「任意売却」を選ぶ例もあります。売却後に残った債務は、ローンの契約上の債務者が返済を続けることになります。

どちらかが住み続ける場合

子どもの学校や、引越しの負担を考えて、一方が住み続ける選択もあります。この場合に必要になるのは次の手続きです。

ローンを引き継ぐ側に十分な返済能力がないと、金融機関の審査が通らず、債務者を変えられないことがあります。その場合に「出ていく側がローンを払い続け、住む側が住み続ける」という取り決めをする例もありますが、払う側の事情が変わると返済が止まる可能性が残るため、公正証書などで条件を残しておくと後から確認できます。

話し合いを進める順番

  1. 登記事項証明書と、ローンの契約書・返済予定表を手元にそろえる
  2. 金融機関にローン残高を確かめ、不動産会社の査定や取引価格で時価の見当を付ける
  3. 売却するか、どちらかが住み続けるかの方針を話し合う
  4. 住み続ける場合は、借り換えや債務者の変更ができるかを金融機関に照会する
  5. 方針と費用の負担を、離婚協議書や財産分与の取り決めに書く
  6. 売却・決済・抵当権抹消、または所有権移転登記を行う

先に金融機関の回答を得ておくと、「住み続けたいが借り換えができなかった」という理由で話し合いをやり直すことを避けやすくなります。

ペアローン・連帯債務・連帯保証の場合

ペアローンは、夫婦がそれぞれ住宅ローンを契約し、お互いが相手のローンの連帯保証人になる形です。共働き世帯が借入額を増やすために使うことが多く、2010年代以降に広がりました。契約が2本あるため、離婚時の整理が単独ローンより複雑になります。

住まいの方針によって、主にかかる費用と手続きは次のように変わります。

住まいの方針主な手続き費用の目安
自分が住み続ける相手のローンの借り換え・持分の買い取り・登記30〜50万円程度(借り換え手数料で増減)
相手が住み続ける相手側の借り換え、自分の連帯保証の解除相手側の負担になることが多いが、保証の解除は双方で確認
売却して精算する売却・完済・抵当権抹消仲介手数料などを折半することが多い。オーバーローンなら差額の負担

ペアローンの状況は、弁護士・司法書士・金融機関に早めに照会しておくと、選べる方法の幅がわかります。

費用の目安

仲介手数料(売却時・400万円超)(売却価格×3%+6万円)×1.1
抵当権抹消登記1〜3万円(司法書士費用を含む)
財産分与による所有権移転登記固定資産税評価額の2%+司法書士費用
繰上返済の手数料0〜数万円(金融機関による)
ペアローンの整理(登記・司法書士・借り換え)合計20〜60万円以上

借り換えが必要な場合は、金融機関によって手数料が大きく違います。複数の金融機関に照会しておくと比べられます。家を渡す側にかかる譲渡所得の税金と、自宅の3,000万円特別控除については財産分与・退職金・慰謝料・税金で説明しています。住宅ローンの返済額や借り換えの試算は、当サイトの住宅ローン計算機でもできます。

卒婚で住まいを分ける場合

卒婚では離婚をしないため、家の名義やローンの債務者は変わりません。どちらが住み、どちらが返済を担うかを、卒婚合意書の生活費の項目に書いておく形になります。後に離婚へ進んだ場合は、その時点でこの記事の手続きが必要になります。

もしも卒婚電卓では、Q.05で「ある(ペアローン)」を選び、Q.05bで住まいの方針(自分が住む・相手が住む・売却など)を選ぶと、ペアローンの整理費用を含めて試算できます。

この記事の位置づけ

制度の一般的な仕組みと、判断に使える数字を整理したものです。個別の事情でどう扱われるかは、弁護士・法テラス・年金事務所・税務署・自治体の窓口などで確認できます。

計算例・費用の目安は当サイトの独自試算です(2026年9月時点)。仲介手数料は宅地建物取引業法にもとづく上限額の式で計算しています。

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参考・出典